おっさん動くはず

初仕事を終え家に帰ると異変が
おっさんの可愛い鼻から長い毛がはみ出していた。
ヌヌ…
ファッションリーダーを自負するダンディーおっさんの鼻からなんと…
大きなアクションで思い切り抜くと
大きなくしゃみが「ハックショーン」
その勢いで鼻の中で納まっていた
鼻毛が思いっきりドバっと飛び出した。

「まあ、たくさんのお毛たちがこんなにも…」
おっさんの心が呟いた
そこで現れたのが「鼻毛カッター」
今まで2度使用。
これ結構きれいに切れるんだよね。



動かし始めて、すぐに気付いた。
ちょっと、勢いが弱いなあ、電池が少なくなっているのかな。
まあ、この回くらいまで持つだろう。
大丈夫！大丈夫！

そそと鼻の穴に突っ込んでみると
鼻毛はパチパチと軽やかな音を響かせながら切れていく。
鼻歌でも出ようかとしていた
その時、いきなりカッターのモーターが止まった。
あれっ、カッターをはなから抜き取ろうとすると
カッターに鼻毛が絡みついてしまっている
ちょっと動かすだけで、涙がぽろり、
意を決して思い切って抜き取ると、
大きなくしゃみを連発。
長い鼻毛が3本ぬけて、カッターに絡まっていた。

涙をぬぐいながら、カッターを回すと
弱々しく回りはじめた。
ここで、電池を変えるべきだった。
めんどくささと電池が持つだろうという淡い期待から
おっさんはそのまま鼻毛カッターを鼻に刺した。

そう心に決めてしまったからにはおっさんも男だった。
何度、カッターが止まって、鼻毛をぶち抜き
くしゃみをし、涙を流そうと、おっさんはその試練に耐えて
鼻毛の無いダンディーな男になるのだと
その過酷なまでの試練に挑んだのである。
新年の誓いであったのだ。

いつの間にかテーブルの上は、涙とくしゃみと鼻水で
ティッシュの山となりかけていた、その時異変が起きた。
さっきまで弱々しくも動いていたカッターが
動かなくなってしまった。
叩いても揺すっても動いてくれない。

こうなったらしょうがない。
男の意地も、新年の誓いも、今までの努力も
すべてあっさり捨てて、
隣の部屋から電池をとってきた。

当たり前のことなのだが、
電池を入れ替えた、鼻毛カッターは
勢いよく動き、見違えるスピードで鼻毛を処理していった。
あっという間に鼻毛処理は終わってしまい、
努力して作ったティッシュの山がテーブルに残された。

新年の教訓
　１：急がば回れ！
　２：骨折り損のくたびれもうけ！
　３：泣きっ面に蜂！
　４：ちりも積もれば山となる！

みなさんもご注意あれ！


ティッシュの山を持って隣の部屋に行くと
試験勉強中の娘が言った。
「お父さん、『いてっ』とかくしゃみとか、鼻かむ音がうるさいんだけど…」
「ごめんなさい…テヘッ」

ダンディーの道は今年もいばらの道である。